幸福(しあわせ)のスイッチ

上野樹里、本上まなみ、沢田研二ら豪華キャストで贈る温かい家族の物語です

家族の絆はプラスとマイナス。くっ付いたり、離れたり。

三姉妹のからみが自然で心地よい

和歌山県田辺市を舞台に綴られる父と三人姉妹の心温まる物語。家電販売の主流が大型量販店になって久しい今日、田舎で町の電気屋さん「イナデン」を営む稲田誠一郎(沢田研二)は、不況の影響でただでさえ儲けが少ないにもかかわらず、採算を度外視した仕事ばかりを一生懸命引き受けるまじめ一筋の性格。

そんな父の生き方をどうしても理解できない現代っ子の次女の怜(上野樹里)は、一人実家を飛び出して東京に進学し、卒業後はデザイン会社でイラストレーターとして働くことになった。

しかし、自己主張だけは一人前の彼女も、肝心の仕事のほうは自分が思い描いてた理想と現実のギャップに悩まされていた。そんなある日、営業マンの澄川(田中要次)から自分のイラストについてダメだしをされてしまう。これに怒った怜は、同僚で彼氏の耕太(笠原秀幸)の説得も空しく、入社一年も経たずにスッパリと退職してしまった。

そこに実家にいる高校生の妹・香(中村静香)から新幹線のチケットが同封された手紙が届く。亡き母に代わって家を切り盛りしてきた姉の姉の瞳(本上まなみ)が、急病で倒れ入院したというのだ。

驚いた怜は和歌山田辺市の実家に急遽駆けつけたのだが、病院で見たものは姉の姿ではなく、足を骨折した父・誠一郎の姿だった。そう、父との折り合いが悪い怜を家に戻すには、姉が倒れたことにしないとダメだと考えた香の「策略」だったのだ。

自分の身体を省みず、ベッドの上からお客へ愛想よくのアフターケアの電話をかけまくっている父の姿にあきれる怜。そして、姉・瞳が妊娠している&生活費を援助してくれる、という理由で、電気屋の仕事を手伝うことになってしまった。

久しぶりの実家に馴染めないうえ、慣れない家業にもふてくれされる毎日。さらに父の過去の浮気疑惑まで持ち上がり、不満は募る一方だったが、父の仕事ぶりや人柄が地元の人に愛されていることを知るにつれて、家族の絆のありがたさや、働くことの喜びを見出していくのだった…。

出演

子を思う親の気持ちや親に反発する屈折した主役・稲田怜を演じるのは映画「スウィングガールズ」で一躍全国区となり、ドラマ「のだめカンタービレ」の野田恵を演じるなど、若手女優の筆頭株と期待されている上野樹里。その仕事中毒ぶり、つっけんどん娘への態度に愛情をにじませる(ツンデレ)古きよき時代の親父を熱演しているのは沢田研二。この素直になれない不器用な親子関係に、いつのまにかホロリとさせられる。

また、怜の母親代わりとなる長女・瞳には「ゆるキャラ」的なほんわか感が幅広い年代層に指示されている本上まなみが、そして末っ子らしく天真爛漫な三女の香を、オーディションで選ばれ本作品が映画初出演となるグラビアアイドル・中村静香が好演している。そのほか、林剛史(特捜戦隊デカレンジャー、容疑者Xの献身)、新屋英子(ジョゼと虎と魚たち)、笠原秀幸(亡国のイージス)、石坂ちなみらが出演。

監督・脚本は、松下電器産業(パナソニック)の販促部門で働きながら作品を撮り続け、「忘れな草子(あきる野映画祭グランプリ)」「イタメシの純和風(あきる野映画祭グランプリ)」をはじめ、インディーズ映画祭で数々の賞に輝いた安田真奈。構想10年、自身のOL時代の体験を踏まえ、退職後3年かけて取材を行っただけでなく、実際に電気屋で働いて映画化を実現した。

感想

思春期~20代前半の年頃は、男女を問わず両親や周囲の人々の愛情や気遣いを感じつつも、なんだかうざったくなったりしてつい反発してしまう-こんな経験は誰にでもあると思う。そんな屈折した女の子をすっかり女優業が板に付いた上野樹里が、ダイナミックかつ繊細に演じている。

根っからの仕事人間の父親・誠一郎の娘に対するぶっきらぼうな態度、その裏返しにある愛情を沢田研二が圧倒的な存在感で演じており、この二人の掛け合いから醸し出され、徐々に深まっていく家族の絆に追体験的な思いを抱いた方も少なくないであろう。

大量生産・大量消費の現代は商売のなか、特に売り手と買い手の間に人間関係が育まれることはまれになってしまったが、沢田研二が演じる誠一郎は一軒一軒の家庭を回って、無償のサービスや修理を行い、人々から感謝され、そして愛されている。嫌々家業を手伝いをさせられ、家族・彼氏に文句たれまくりだった怜が、この仕事を通じて、人と人の繋がりの大切さに気づいたとき、それまで頑として閉ざされていた彼女の心の変化に訪れる。

特に大事件が起こるわけでもなくストーリー自体はよくある「家族っていいよな」的な映画だが、怜が街に戻ってくることを匂わせているエンディングの後にはちょっとだけ前向きになれる自分がいる。脇を固める姉・本上まなみ、演技力は「?」も天真爛漫な妹・中村静香、亡くなった母親、行きつけの飲み屋の女将、そして田舎町のお客、そしてエキストラ参加の田辺市民がリアリティー溢れる街の人間模様を醸し出しており違和感がない。

監督・脚本の安田真奈が実際に電気屋さんに身を置き、3年間にわたって入念な取材を行っただけあり、ビジネスにおける本当の顧客サービスとはなんぞや?というテーマにも光があてられている。監督の次回作は、絵本作家を夢見る母親とその子育てをテーマにしているとのこと。そちらも期待したい。

上野樹里 公式サイト…本作品で主役の怜を演じる上野樹里さんの公式サイトです。プロフィールをはじめ、出演情報や写真などが掲載されています。
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